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翼の記憶 -追憶編-
【ファンタジー 恋愛小説】

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生まれ持ったものT-1

人には生まれ持った能力が存在する。ここ悠久ではそれが色濃く残っている国で、力をもった者は王宮へと上がり、王に仕えることもある。





剣士のカイは彼の一族のほとんどが剣士だったため遺伝的要素が強いのかもしれない。真っ直ぐで純粋な心を持ち、剣士であることに誇りをもっている。



優秀なアレスが王宮にあがった時、すでに並ぶ者がいないほどにその力は強く、キュリオに変わり人々の怪我や病を治療するために遠出することもあった。キュリオが悠久を離れなければ、そこが問題になることはない。しかし、国を離れ他国へと足を運ばなくてはならないこともあり、王は多忙なのだ。






悠久の民のほとんどは能力を持たずに生まれ、絶対的な力を誇る王がすべてを担っている。代々この国の王は慈悲の力を持ち、癒しと浄化・結界を生成する能力に恵まれているのだ。





アオイがこの城にきた当初、彼女に眠っている力があるかどうか噂する者たちがいた。





そんな話を耳にしたキュリオは・・・






「力があろうとなかろうと、この子が私の娘であることは変わりない。そんなことは問題ではないのだ」





と、一喝したことがあった。
カイなどはアオイが剣士としての素質をもっていたら・・・と秘かに期待していたようだが、キュリオはよい顔をしなかった。






(もしこの子が将来剣士として成長したならば・・・怪我をしてしまうかもしれない。逞しく育つことは悪いことではないが・・・花や鳥を愛でる優しい子に育って欲しいと思うのは私の我儘なのだろうか・・・?)





だが、捨て子だったアオイの出生の詳細はほとんどが謎に包まれており、実の両親がどこの誰かもわからないのだ。その子が今、キュリオやアレスが得意とする癒しの力を持ち、やっと歩き始めた幼子に早すぎる能力の開花が始まったのだ。





キュリオから見れば、アオイが癒しの力をもったとなると願ったり叶ったりなのだが・・・いささか不安なところがある。






キュリオはしばらく考えたのち、席を立つと記録を残してある書庫へと足を運んだ。






――――・・・






結局、王専用の浴場に入ろうとしないカイに口を尖らせながらアオイは女官に連れられて行った。カイは聖獣を抱きかかえながら通路でアオイの帰りを待つ。





「アオイ様が特異体質だとしても・・・」




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