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翼の記憶 -追憶編-
【ファンタジー 恋愛小説】

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生まれ持ったものU-1

「俺が必ずお守りしてみせます」






ぎゅっと拳を握りしめたカイは、並みならぬ決意を胸に秘めていた。






カイに抱かれた聖獣が尻尾を振って、きゅぅっと鳴いた。






―――――・・・






「いけません姫様っ!!」






女官の慌てた声にカイは振り返った。と、そこにはタオルを頭からかぶったアオイがカイに向かって突撃してくる。






「えっ!!ちょっ・・・アオイ様!?」






しどろもどろになりながらカイがアオイを受け止める。間に挟まれた聖獣は嬉しそうに尻尾を振ってアオイにすり寄った。






「アオイ様!!レディがそんな・・・」






「捕まえましたよっ!姫様!!」






「いやぁーっ!」






女官にしっかり抱きしめられて、手早く柔らかな服に身を包まれる。その間、カイは視線をそらしていたが、アオイが美しいレディへと成長したときのことを想像するとその胸は激しく高鳴った。





(お、俺は何を考えてるんだ・・・っ!!
アオイ様はキュリオ様の娘で・・・俺の守るべき姫君なんだ・・・!!)






ぶんぶんと首を振るカイの足に何かが絡みついた。視線を下げるとアオイが湯上りの赤い顔でカイに微笑んでいる。






「あまり人に肌を見せてはいけませんよ?アオイ様はおんなの子なんですからね?」






「んー?」






きょとんとして首を傾げるアオイの頭をなでながら、カイはその手をひいて広間へと戻って行った。






―――――・・・






アレスは手にろうそくを持って、ぶ厚い書物に目を通していた。





(アオイ様と同じような事例は・・・
癒しの力を持つ者でも、己の傷しか癒せないという話はよくあることだ・・・むしろ他人の傷をも治せる者のほうが少ない・・・・)






そもそも他人の傷や病を治せる者は一流の導師として認められ、王宮で役職を与えられるほど貴重な存在だ。その力の差があらわれるのは、治療の速さと完治具合だろう。






「目覚めたばかりの能力者が、己の傷を癒せないということもあるのだろうか・・・・」






アレスのまわりにはたくさんの本が積み重なっている。これだけ調べても、いつの時代の記録にもそんなことは書かれていない。






その時、重たい扉が開いてろうそくの灯が小さく揺れた。








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