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翼の記憶 -追憶編-
【ファンタジー 恋愛小説】

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異変V-1

やがて頬に赤みが差したアオイの額に手をかざし、キュリオは目を閉じた。


(この子が大きくなって・・・その力に体が耐えられるようになったら封印を解こう。それまではもうしばらく・・・)



キュリオの封印の力がアオイの小さな体を包み込み、瞬く間に光の粒がキュリオの手に吸い込まれてゆく。






「キュリオ様・・・」





その様子をみながらガーラントは視線を落とし、可能性に溢れた目の前の小さな姫とキュリオのやりとりを静かに見つめていた。






―――――・・・






「アレスと言ったな。
私に頼みごとがあって来たのだろう?」






アレスが顔をあげると、偉大な五大国の王のひとりである冥界の王・マダラが神秘的でどこか冷たい印象を受ける涼しげな目元を細めてこちらを見ていた。


キュリオのように温かみのある美しさとは対照的に、マダラの美貌はまた違ったものだった。その切れ長の目は、魂を覗くことが出来る唯一の王と言われるだけあって、全てを見透かしているような不思議な力を秘めていた。





吸い込まれそうなマダラの瞳を直視したアレスは改めて深く一礼した。






「冥界の王マダラ殿、貴殿にひとりの魂を覗いていただきたく参りました」






「・・・キュリオ殿とて解決できぬ壁にでもぶちあたったのか?」






ふっと口元に笑みを浮かべてマダラは脳裏に困り果てたキュリオを想像し目を閉じた。






「いえ、キュリオ様はその方に関してこれ以上詮索してはならないと申されました。ですが・・・」





押し黙ったアレスの様子にマダラは口を閉ざした。





「・・・・」






「キュリオ様が何よりも大切に想われているあの方に万が一・・・何かが起きてからでは・・・」





「まぁ待て。
お前の話からでは相手が人間だという事しか伝わってこない。・・・もっと具体的に話せないのか」






「それは・・・」





他国の王たちに知られてはまずいことではないかもしれないが、小さな姫の正式なお披露目というものは悠久の国でしかなされておらず、ましてやアレスが公言して良い事だとは思えなかった。






「なぜそこで躊躇う。
キュリオ殿の弱点となることを心配しているのか?」









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