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Sincerely -エリカの餞-
【二次創作 その他小説】

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004 最初の犠牲者・1-1


 004 最初の犠牲者・1





 鉄板が張り巡らされた教室に銃声が響き渡ったのと、その標的が赤い血飛沫を巻き散らせて倒れたのはほぼ同時だった。耳をつんざくような甲高い悲鳴が巻き起こり、逃げ惑おうと席を立つ生徒たちの行動は、次なる標的を定めようと銃を構えた兵士たちによって停止されてしまう。
 その中で、一人唖然としながら、なりふり構わず駆け寄った少女がいた。黒光りした残酷な凶器が、次なる目標を仕留めるのはその一発で十分だった。

 なにが起こっているのかわからない。

 ──殺し合いをしてもらいたいと思います!

 そんなセリフは間違いだ、嘘だと否定したい願いは、現実を前に呆気なくも砕けた。





   * * *



 本堂空太(男子十六番)が目覚めた時、頬に固い感触と木材の独特な臭いがしたので、自分は授業中に机に突っ伏して居眠りしてしまったのだとまず思った。上半身を起こそうとして次に思ったのは、釈然としない違和感と息苦しさ。首筋がきつい、そう思って襟足に差し込んだ手に硬い感触と金属音を耳にした時、空太はようやく事態の異常性に気付いたのだった。
 胸を躍らせた修学旅行の当日、空港行きのバスに乗り込んで、賑やかな車内でクラスメイトたちと雑談に華を咲かせてカラオケをして、はしゃいで、いっぱいいっぱい笑って、それから、──それから? そうだ、確かにバスに乗っていたはずなのに、何故か目覚めた場所は似ても似付かない違う空間──学校の教室だった。机に突っ伏して眠っていたのだ。
 驚愕に歪んだ顔を上げれば、そこには見知ったクラスメイトたちがそれぞれ記憶の中と一寸変わらない指定の場所に着席している。しかしおかしなことだらけだった。見慣れたはずの彼らの首筋には空太と同じように、見慣れぬ銀色の首輪が巻き付かれていたのだ。そして、教卓の前には見慣れぬ若い女性と、その後ろには明らかに軍人と思わしき六人の兵隊が、見慣れぬ武器を肩に担いでこちらを窺っているのだ。襟首に着けられた桃のバッチが目に入る──それは、大東亜共和国の専守防衛兵士を表す称号であった。
 背筋を滴る冷や汗が、瞬時に凍り付いたような気がした。全体主義であり軍人主義であるこの国でそれがなにを意味するのか、知らない国民は恐らくいないはずだ。例えば空太のようなまだまだ世間知らずの子供であっても、それ≠ヘ小学四年生の社会の授業から毎年教科書に書いてあるし、当時の総統陛下が行ったとされる四月演説≠ヘ洗脳するかの如く毎年読み上げられる。先の大戦で枢軸国の勝利に終わってから、今日までずっと実施され、現在においても準鎖国体制を取っているこの大東亜共和国が、グローバル化に伴いこれから世界と再び手を取り合うことがあっても、廃止されることはないだろう。徴兵制のない共和国に代々受け継がれて来た法律、防衛上必要な戦闘実験と称する、それは。

 でも、──でもまさか、自分が、自分たちに限っては、そんなはずは──それは空太だけでなく、きっとクラスの誰もが思っていることに違いない。自分だけは大丈夫。時々、地方のローカルニュースにて実施されたことを知っても、自分たちだけは大丈夫だろうと思い込んでいた。この後に及んでもまだ信じていた。窓に鉄板が貼り尽くされた見慣れたようで見慣れぬ教室、見慣れぬ人々。それでも、認められなかった。



「コングラッチュレイショオオオン! 今日そなたらに来て頂いたのは他でもない! そなたらには、これから殺し合いをしてもらいたいと思いまあああす! きっひひひひひひひひひひひ、ほらほら嬉しいだろ嬉しいよなァ? 光栄だよ名誉だよお前ら手ェ叩いて喜べよぉおおおっ、ひゃっはっはっはっはっはっはははははははははははは!」





【残り:四十四名】


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