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おはよう!
【純愛 恋愛小説】

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おはよう!-1




4月上旬。春休みを経て、和音は高校3年生となった。
とは言っても、春休みの講習で学校には、週に何日も通っていたので、特別改めて思うことはなかった。

駅から歩いて数分の場所にある学校の通学路を、音楽を聴き、ケータイを弄りながら歩いている和音。
何をしているかと言うと、メール作成。
メールの本文には、今学校に向かっていることが簡単に書かれていた。
特にこれ以上書くことも思いつかなかったので、それだけの内容で相手に送信する。
しっかりと送信されたことを確認した和音は、ケータイをブレザーのポケットに仕舞った。
すると、タイミング良く、後ろから肩を叩かれた。
ヘッドホンをしたまま、後ろを振り返ると、そこには笑顔を浮かべた雫が立っていた。

「おはよう、和音!」

その言葉に、和音はヘッドホンを外して応える。
二人は自然と並んで、歩いていた。

「今日から三年生だねー。また勉強だらけの毎日かぁ・・」
「春休みもそう変わらなかったと思うけど。」
「春休みはまだ遊びやお仕事があったから、そこまで勉強!って感じじゃなかったんだよー」
「はいはい、夏休みに期待ね。」
「また遊びに行こうね、和音!」
「いいよ」

和音の返事に、やったあ!とはしゃぎ、喜ぶ雫を見て、和音は小さく笑顔をこぼした。
もう夏休みに想いを馳せているようで、雫がコロコロと表情を変えているのを、和音は小さく笑って見守る。

「夏はそうだなぁ、お祭りに、花火大会、水族館!プールにも行きたいなぁ、あ、でもいっそ海にも行きたい!」
「そうだね」
「色々なところ行きたいなぁ、新しい服も買いたいし、水着も新調したいなぁ。」
「うん。」
「いっぱい行けるかな?」

うん、と頷きかけた和音は、あることを思い出して、ハッとした。

「・・・・」

そして、少しだけ顔を曇らせる。
和音の表情を読み取った雫は、心配そうに和音の顔を覗き込んだ。

「どうかした・・?」
「・・ごめん、雫。意外と行けないかもしんない。」
「え?どうしてって、あ、そっか・・」

先ほどより、少しだけ沈んだ声色で告げた和音の台詞に、雫は一瞬だけ戸惑ったが、すぐに和音と同様に思い出した。
言いにくそうにしている和音に代わって、雫が告げる。

「鼓笛隊、だよね?たしか舞台って夏だったもんね」
「・・・うん。」

読み取ってくれた雫に、和音はただ頷いて、雫の予想が合っていることを示した。

忘れてはならない、奏多との(無理矢理な)約束。
結局、未だに約束を不意にすることは出来ず、かといって手を抜くことも出来ない和音は、自分がどうしたいか決めかねているままに、練習に付き合っている。


「(付き合っている、というのは語弊かもしんない。)」

ぽつり、と心の中で言葉が跳ねる。

確かに、練習自体は奏多のペースに相変わらず振り回されている。
しかし、一つだけ大きく変わったことがあった。
練習を欠席することしかメールを送らなかった和音が、練習に行くということもメールを送るようになった。
それだけではなく、なんとなくという感じで、和音の気が向いたときにも何でもない内容をメールするようになった。
先ほどの、メールのように。

呟いた言葉が大きく跳ね返って来た、と和音が考えることを止めようとした時、ブレザーのポケットに入れたケータイがバイブで震えた。
もしかして、と思った和音は、雫に一応断りを入れてから、ケータイを取り出す。
ケータイを開くと、そこには“メール 新着一件”と通知表示されていた。
そのままメールを開くと、和音の予想した相手からの返信だった。

『そっち行ってんの?俺は寝坊したー、やべー』

という、こちらも簡潔な文章だった。
その文章を見た和音は、肩をすくめた。

「(バカでしょ。ていうか、焦ってる感じが無いんだけど)」

心の中で毒つく台詞とは違って、画面を見つめる表情は、小さな幸せを享受する女性のものだった。
後で返信しようと思い、ケータイをたたむと、再びポケットに仕舞った。


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